キスの練習
最近、フィギュアとか集めてる男子がキモいとか言われてる。彼の部屋に行ってガッカリした彼女とか。
一人っ子の自分は小学生の頃は何をしていたんだろう?
精々、
映画みるとか。それもショーン・コネリーの007など。やっぱりフィギュアはない。007といえばボンドガール。やたらとキスシーンが多かったような気がする。キスのコンクールみたいな演出もあった。勿論優勝はボンド。子供の私が見て、上手い下手は全くわからないがボンドの時だけどの女性もクネクネと身悶えしてちょっと声を漏らしていた。私はこう思ったに違いない。
「キスって練習するものなのか?」
いつどうやって練習するのか。誰をあいてに練習すればいいのだろう?。身の回りの女と言えば、小学校の同級生か、母か祖母。
祖母は即アウト!
シワクチャ、入れ歯、鬼怖い!!
同級生もまあ無理。そいつの兄貴にフクロにされるか、先生に告げ口されてクラス中の笑い者になるだけだ。
残るは母。
母はまあどちらかと言えば私似の美人(少なくとも子供の私にはそう見えた)。
決行は夜だ。
夜、寝静まったところを気付かれないようにコッソリしてみる事にした。その夜、小学2年生
のくせに、私はギンギンに目が冴えていた。逆に、仕事で疲れた母はもう眠っている。隣に寝ていたフリの私は気づかれないように、念には念の、息を殺して、顔を近づけ、母の唇に狙いを定め、ドンドン距離を詰める。ほんの数センチまで迫った時、
「ブチュッ!!」
と、母の方からキスをされた。感づかれていたのだ。どうにも気恥ずかしく、どうして良いのかわからずに、呆然としている私をよそに、母はその眼瞼(まぶた)を開けることなく、おそらく眠ったフリをしてくれたのだ。
私が母から愛を感じたのはこれが最後だった。